白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
「こういうの迷惑です」
「今日は一人で待てたんだな」
人の話を聞くこともせず、勝手に頭を撫でてくる。
この前会った時と、その態度は一つも変わらない。
「……別に、あなたを待っていたわけではありません」
「なら、なんでここにいる?」
「たまには、いいかなと思って」
「ん?」
「夜の観覧車を見るのも」
私の仕事が終わるのを見計らったように送られてきた、椿王子からのメール。そこに書かれていたのは、デートスポットとしても人気の観覧車。
思いも寄らない指定場所に、悩む暇なんてないまま電車に乗り込んでいたのだから、自分でも驚く。
「芙美は夜景が好きかなと思って」
私の右手に触れた指先が、自然と絡められていく。
こういうことする相手なんて、いくらでもいるくせに。
「あの、」
「乗ろうか」
少し強引に引かれた手に、言いかけた言葉を飲んで頷いた。
「乗るの初めて?」
二人だけの小さな箱の中で、椿王子の声が私の髪を揺らす。
「……高校生の頃、彼氏と乗りました」