白馬の悪魔さま 【完】番外編追加
観覧車を降りても、私達の指は絡まったままだった。
近くのパーキングに停められていた車は、いわゆる高級車。
落ち着かない車内で、ライトアップされた歩道を行き交う人たちをぼんやりと見つめる。
「何食べたい?リクエストがあれば連れて行くけど」
「椿社長にお任せします」
私の答えに、ハンドルを握る椿王子が穏やかな笑みを作りながら「わかった」と答える。
全ての仕草が完璧で、私はまた目を背けた。
金曜の街はどこを見ても忙しない。
「え、ここって」
車が辿り着いた場所に、私はわかりやすく動揺してしまう。
「覚えてる?」
「覚えているも何も、まだ一週間しか経っていません」
「どこでもいいって言うから」
「そういう意味で言ったわけでは……」
「大丈夫。飯食うだけだから」
そんな言葉で納得するほど私は簡単ではないし、純粋でもない。だってこの部屋で過ごすってことはつまり……。
「また、タクシーで帰ればいいんですか?」
また同じことを繰り返して、バカみたいに傷つく。
「嫌か?」
男の手が私の頬に触れ、その瞳を映す。