今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
互いを想い合ってする結婚ではないから、相手を必要以上に気遣うこともない。
書類上だけ、人様の前だけ。
この結婚は形だけの夫婦なのだ。
外では寄り添ってみせても、プライベートな空間では会話もないかもしれない。
先の見えない縁談から逃れるために飛び付いた話だったから、今更どうこう言うことではないし、仕方ないことだ。
いずれ、お互い本当に愛せる相手を見つけることになるのだろう。
(そういえば……この政略結婚には、期限とか設けるのかな……?)
「あの……この関係は、いつまでとか、期限とかっていうのは」
「ああ、そうだな、特に考えてはなかったが……俺としては、開院百周年の祝賀会に一緒に出席してもらいたい都合がある」
「百周年の祝賀会……?」
怜士が次期院長となる鷹取総合病院は、大正に開院し受け継がれた古い歴史があると聞いている。
来年、記念すべき開院百周年を迎えるのだ。
「その席で、婚約者として振舞ってもらえばいい」