今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
幸い下半身は黒いスウェットパンツらしきものを履いていたけれど、それでもやっぱり心臓に悪い。
こんなこと初めてで、見てしまったものが沙帆の鼓動を速めていく。
普段接する着衣の状態じゃわからなかったけれど、ドキッとしてしまう引き締まった筋肉質な身体をしていた。
(腹筋とか割れてたし……って、見過ぎだから私!)
動けなくなっていた自分に急に慌て始めて、洗面をひとまず諦めて踵を返す。
その背後で急にドアが開けられ、驚いて勢い良く振り返ってしまった。
「あ、お、おはよう、ございます……」
出てきた怜士は、もう上にTシャツを着ていて、濡れた髪をタオルで拭いていた。
ホッとしたのもつかの間、髪をバサバサとタオルで乾かしながら、怜士は立ち尽くす沙帆へと距離を詰める。
自分へと近付いてきていると思わなかった沙帆は壁際に身を寄せたものの、いきなり廊下の壁と怜士とに挟まれるようにして追い詰められてしまった。
怜士の右手が壁を突いてトンと音を立てる。