今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
部屋の前に【大河内咲良様】と書かれたプレートが挿さるのを目に、佐田がスライドのドアを開けていく。
「どうぞ」と言われ頭を下げると、佐田は「わたくしはしばらく外させていただきます」と言い、一緒に中へは入らなかった。
しんとした部屋の中、トイレやシャワールームを横目に、入り口から進んでいく。
病室となる奥の部屋には、ベッドの上に咲良が上体を起こして横になっていた。
近付く沙帆の気配に気付いているはずなのに、咲良は窓の外をじっと見つめている。
仕方なく沙帆の方から「失礼します」と小さく声をかけた。
それでも、咲良は沙帆に視線を寄越さない。
「あの……」
「クリスマスイブの日……怜士先生を足止めしたのは私よ」
「え……?」
咲良は未だ外を見たまま、抑揚のない声で唐突に話を始める。
沙帆はその場に立ち尽くし、咲良の横顔をじっと見つめた。