今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
怜士が沙帆との婚約を結びたいと思ったのは、明日の祝賀会で自分が婚約したということを広く知らしめたいという目的が一番だった。
沙帆を連れて顔見せをし、身を固めるという姿を披露する。
でも、その目的が果たされたら……。
「明日の、それまでの予定は?」
「あ、はい……お昼にヘアサロンに行って、そのまま向かいます」
「そうか。じゃあ、会場で会う形になるけど、大丈夫か」
沙帆が「はい」と答えると、怜士は横から沙帆の下された髪のひと束を手に取った。
髪の先に触れられただけで、とくんとくんと心臓が甘かやに音を立てていく。
切っても痛みを感じない髪の毛なのに、そこに感覚があるように沙帆は肩を揺らした。
「髪はあんまり切るなよ? この長さのままがいい」
「っ……」
どうしてそんなことを言うのだろうか。
(明日が終われば、もう一緒にいなくてもいい私に……)
沙帆は困惑の大波にのまれていく。
「あの、怜士さん……」