今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~


「嘘だよ、冗談」

「そんな冗談……やめてください」


怒ったような口調で言い返しながらも、沙帆は怜士に回した腕にぎゅっと力を込める。

こういう裏腹な可愛い態度が見たくて、怜士はわざとそんな意地悪を沙帆に言っているのだ。


「まあ、やっぱり俺と一緒になれないなんて言い出しても、俺が許してやれないけどな。もう離せない」


いじめた分、怜士は沙帆に甘い言葉を囁く。

身体を離すと、沙帆は頬を赤らめて怜士を見上げた。

怜士自身、こんなに沙帆を溺愛するだなんて出会ったばかりの頃は思いもしていなかった。

はじめに婚約の話を持ちかけたのも、〝沙帆なら自分の求める条件に見合っていたから〟。

それが一番の理由だった。

医者が嫌いで、自分と同じく両親に結婚を迫られているという境遇。

そんな沙帆なら、〝婚約者のフリ〟をしてくれるだろうと思っただけだった。

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