からめる小指  ~愛し合う思い~
一時間も走ると……いつも生活している所からはかけ離れ

木立の広がる別荘地帯が見えてきた。

「別荘に着く前に買い出ししとこうか?
今日は二人で美味しいご飯を作ってくれるんだよね。」

今夜はみんなでバーベキューをすると言ってたのに……

樹の奴………はぁちゃんとの初お泊まりに浮かれてるな。

俺と尋とは違い、樹のマンションにはぁちゃんは家族と一緒に住んでいる。

その為、泊まりは愚か………二人でゆっくり家デートするのも大変なのだ。

樹が俺の部屋に、はぁちゃんが千尋の部屋に来て合流するか

こっそり樹の部屋に行くしかない。

親が近くにいて、顔見知りだと………中々手も出しにくいよなぁ。

そう思うと……尋には悪いけど、尋と親御さんの仲が悪いから

泊まりに来たり、遅くまで一緒にいても問題無いんだよな。

唯一心配していた姉ちゃんまで、仕事の忙しさに尋と関わるゆとりが

無いみたいだから。

「えっ!ご飯………私達が作るの??」

家族と一緒に生活しているはぁちゃんは、まともに料理をしたことが

無いのだと、千尋が言っていた。

二人で女子会をする時は、料理をしている千尋の横で

つまみ食いを専門に担当しているんだと……。

千尋もホンの少し前までは、全く出来なかったが………

今は姉ちゃんに教えてもらって、基本的な物は作れるようになっている。

「はぁちゃんの手料理、楽しみ!」

まだからかいモードの樹は、はぁちゃんの困った顔を堪能してる。

ウチのお嬢さんは、全く動じることなく

「先生は、何が食べたい?」と聞いて来る。

「う~ん、やっぱり肉かなぁ?」

「お肉だったら………」

俺のリクエストに応えようと、出来そうなメニューを考えている。

千尋に言ってないけど……

実は俺………かなり料理が得意だったりする。

親がいなかったから、小さい頃から自分でどうにかしないと

生きていけなかった。

おまけに、独身生活が長く……仕事をしてからは特定の彼女を作ってないため

自分で作らざるおえない。

…………と言っても、仕事を始めてからは……飲みに来た友人の

朝飯程度で、普段は面倒だからコンビニで済ませているが………。

樹もそれを知っているから、安心して泊まりに来た。
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