桜の舞い散る頃
何だか大人の服を着た、子供の様な格好だけど、せっかくの好意なんだから、良しとしよう。
「室長、シャワーありがとうございました。」
リビングに戻り、室長にお礼を言う。
「ああ、高梨君も朝食にしたら、コーヒーを淹れるよ。」
「ありがとうございます。それじゃあ、昨日コンビニで買って来た、クロワッサンを頂きます。」
沙耶は、カウンターの上に置いておいた、レジ袋からクロワッサンを取り出した。コーヒーのいい香りが漂い、食欲をそそる。
「はい、どうぞ。」
「ありがとうございます。」
淹れたのコーヒーを一口飲む。はぁ~美味しい~。思わず頬が緩んでしまう。こういう些細な事に幸せを感じてしまう。ン~、私ってお得な性格だよねぇ。
「‥‥‥フフ」
「何か楽しい事でも思い出した?」
立花は、楽しげに微笑む沙耶に、つられるように口元に笑みを浮かべ、じっと見つめた。彼女の笑う顔が、とても可愛いと、以前から思っていた。いつも真面目に仕事に取り組んでいて、頼まれた事に対しては完璧に仕上げて来る。そんな真面目な彼女が、時々見せる笑顔は、課の連中にとっても、陽だまりのような暖かい気持ちにさせてくれる、至福の時だ。
愛おしい‥‥。自分にだけに向けて欲しい。
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