短編集 【善人のフリした悪人】
「さぁ着いたぞ。
お前も48年、よく頑張ってくれたね。」
孤児院に着くと、ソリから降りたトムは優しくトナカイの首を撫でた。
プレゼントがいっぱいに入った袋を担ぎながら施設の入り口に向かうと、
トムを待ち構えていたかのように、
1人の男が立っていた。
「マキタ、遅くなってすまなかったね。
子供達はもう寝たか?」
「・・・はい・・。」
「これこれ。
泣くのは配り終わってからにしよう。」
「トムさん・・。
今年まで本当にありがとうございました。
俺・・・感謝しか無くて・・。」
「私は年に1回プレゼントを贈っていただけだから。
マキタがこんなに立派になって、施設の子供達の為に働くようになるとは想像してなかったけどね。」
トムの分のスリッパを用意して、
一緒に中に入っていった彼の名はマキタ。
この孤児院で育った彼もまた、
トムに見守られていた子供の1人である。
大人になった今は、この施設で自分と同じ境遇に立つ子供達に寄り添っている。