ハイド・アンド・シーク


それが、彼の出会い。
もう一年前のこと。

彼は確かに、その翌週から私のいる営業課企画部に異動してきて、主任として働き始めた。
まさか、彼が主任だったなんて心底驚いた。

私なんかが気楽に仕事の悩みを相談出来るような相手じゃなかったからだ。


でも、あの日から私の心は彼しか見えなくなっていた。

とても優しくて、とても穏やかで、私にだけじゃなくみんなに同じように接する彼を、私はずっと密かに一年の間想い続けていた。


あの日みたいにコーヒー一杯で話をするようなことは、あれから一度もない。きっとこれからも無いだろう。
いい思い出だと思う。


彼のデスクに置かれている、予定や締切がびっしり書き込まれた卓上カレンダーを見ると、真似してカレンダーを置いている自分とリンクしているみたいで嬉しかった。

あの頃よりは、少しは成長出来ているかな、なんて思うのだ。

有沢主任は、あの日給湯室で二人でコーヒーを飲んだことを私に一度も言ってきたことはない。
部下との会話のひとつとして流れていったのかもしれない。


それでも、私にとっては特別な日だった。


見てるだけでいい。
遠くから、目が合わないように見てるだけでいい。

近づきたいなんておこがましいことは言わないから、もう少し彼を見ていても誰も文句は言わないよね、きっと。






─────私は、有沢主任のことが好き。



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