焦れ恋ロマンス~エリートな彼の一途な独占欲
「夢みたいだ……」

「えっ?」

ゆっくりと離されていく身体。すると彼は真面目な顔を見せる。

「滝本、俺の頬を思いっきり抓ってくれないか?」

「……へ?」

急に真面目な顔をしておかしなことを言う彼に、間抜けな声が出る。だけど彼は表情を変えずに繰り返す。

「滝本が俺のことを好きだなんて信じられなくて。……だから夢じゃないってことを知るために、頬を抓ってほしいんだ」

もう、どうして織田くんはそう私をときめかすことばかりするかな。

夢じゃないに決まってるじゃない。私の気持ちを信じてほしい。

その時ふと、初めてふたりで出掛けた時に彼にされたことを思い出した。

あの時織田くんは、私に男として意識させるために頬にキスしたよね? 忘れられない一日にさせるために。だったら私も……。

いまだに真面目な顔で私を見つめる織田くん。そんな彼に私は背伸びをして頬にキスをした。

すぐに離れて織田くんを見ると、固まっている。その姿が可笑しくて愛しくて笑みが零れ落ちた。
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