僕に君の愛のカケラをください
葉月は、目の前で黙々と料理をかき込む蒼真を、片肘をついてじっと見つめていた。

眉間にシワを寄せつつも、口元が緩んでいるのは隠せず、黙々とハンバーグを食べている姿は少年のようでかわいい。

それにしても、葉月が

「おかえりなさい」

と言ったときの、悲しそうなでも嬉しそうな蒼真の潤んだ瞳はなんだったんだろう。

まるで、今日、保健所で段ボールに手を入れたときに擦り寄ってきたジロウとかぶるようで心がざわついた。

葉月は、動物でも子供でも潤んだ瞳に弱い。

そんな瞳をされると、母性本能が異常に擽られて構わずにはいられなくなるのだ。

蒼真は、葉月よりも4つも年上のバリバリのキャリア。

他人からの庇護など必要のない自立した大人。

なのにあの瞳は反則だ。

明日の予定を尋ねると、顔をあげた蒼真と目が合う。

自宅で過ごすという言葉に、ずっと一緒ですね、と告げると頬を赤くして目を反らし、また黙々と食事を始めた。

"なんだこれ、萌えるんですけど!"

葉月は、ジロウと蒼真という新たな萌え対象を見つけて、蒼真に迷惑をかけて申し訳ないと思いつつも内心ワクワクしていた。

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