僕に君の愛のカケラをください
「明日は土曜日ですね。蒼真さんはどこかに出掛けるのですか?それともお仕事?」

テーブルを挟んだ向かいの椅子に腰かけ、葉月は、右手で頬杖をついて蒼真をじっと見つめて言った。

「いや、土日は自宅にいることが多い。仕事ならコンピューターさえあればどこでもできるからな」

目の前には、葉月の濡れたユルフワの髪、ふっくらとしたピンクの唇、上目遣いの大きな瞳。

葉月は前屈みになっているため、大きく開いた襟ぐりからは胸の谷間が見えない、こともない。

故意ではないはずたが、チャンスと捉えてうっかり直視したら理性が崩壊する自信がある。

蒼真は、目の前の御馳走に集中することに没頭し、黙々と料理を口に運びながら坦々と返事をした。

「目覚ましをかけて二時間おきに授乳するので起こしてしまったらごめんなさい。疲れている蒼真さんに迷惑をかけるのは申し訳ないのですが 、、、しばらくの間、ご容赦下さい」

葉月はどこまでも真面目なのだろう。

邪な蒼真の欲望など、欠片も疑っていない。

これまで、塩顔イケメンと評される蒼真と二人きりになった女性は、ほぼ100%が体を擦り寄せて蒼真を誘ってきた。

蒼真は、そんな欲深さを隠そうともしない女性たちに内心あきれていたが、これでは自分も彼女達と大差はないではないか。

蒼真の自宅という特別感満載のシチュエーションでも、葉月の態度はまるで友人や兄弟と過ごすかのように自然だ。

男としての自信は失いそうだが、ここで葉月の信用を失うわけにはいかない。

「葉月がどこかに出掛ける用事があるなら、その間、俺がジロウを見とくけど」

蒼真は観念して葉月の方を向いた。

色気満載の葉月がにっこりと微笑む。

「いえ、私も土日はお家にいます。ずっと一緒ですね」

傾けた色白の首が、蒼真の瞳に妖艶にうつる。

蒼真は目を反らして、気づかれないように数式を頭で復唱しながらハンバーグを夢中で掻き込んだ。

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