僕に君の愛のカケラをください
「蒼真、大丈夫?」

葉月が心配そうに蒼真の右腕を掴んだ。

「あ、ああ」

蒼真は動揺を隠せない。23年間、音沙汰のなかった母親が、今さら蒼真に何の用だというのか?

葉月とのこれからを考え始めた矢先に、どんなトラブルを抱えているかもわからない母親の登場。

蒼真には、最悪の未来しか思い浮かべることが出来なかった。

「昼間来ていたのは市役所の福祉課の職員だ。蒼真に会いたいと言っていたが、ネグレクトの件で、お前の母親は親権喪失した状態だ。蒼真には母親の面倒をみる義務はない。だから、蒼真が納得するまでは謁見は断る、と俺が答えた」

靖晃は蒼真の生い立ちを知っている。

靖晃は、将来、蒼真にこうしたことが起こりうると考えて、弁護士を立てて対応策を考えていたと言った。

「しかし、彼らは蒼真に母親を押し付けようとしているわけではないらしいんだ」

蒼真は定まらない視線をフラフラと靖晃に向けた。

「お母さんは病気が末期状態で,,,余命一ヶ月らしい」

蒼真の思考は定まらない。

もはや、キャパオーバーだった。
< 81 / 91 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop