Mon seul dieu【短編】
身代わりは身代わりでしかなくて
私がこうやってどこの誰かも分からない強面の男達に毎日のように追いかけられるけど、それを助けてくれる人は誰一人として居ない。
「妖華の姫さんみぃつけたぁ。もう逃げ場はねぇぜ?」
さっき聞こえた低い声の男が呼んだ仲間であろう男が気持ちの悪い手つきで私の顔に手を滑らせ
気味の悪い声でそう言って口元を引き上げる。
『妖華』のメンバーは私が追いかけられていると知っているのだろうか。
ここに倒れ込む前に落としてしまったスマートフォンで何度も『妖華』の幹部に電話をかけたけど
一度も無機質な機械音以外にはその機械から発せられることは無かった。
つまり電話には誰も出なかった。