恋愛に無関心の院長が恋に落ちるわけがない
「香さん、取り越し苦労です。私は男の人に誘われることがないですし、男の人といっしょにタクシーに乗るなんて一生ないです」
「と、いうことだそうだ、終了」
「ちょっと待ちなさいよ、あなたね」
行きかける院長と追おうとする香さんが、私に背中を向けた。
「待ってください」
上体が反転した、二人の視線を目の中に受けた。
「香さん、私、院長のゆべしで」
「いいから」
院長に制止された。
「昨日も、ゆべしって。ゆべしがどうかしたの? タクシーに関係ある? どうして、明彦は止めるのよ」
院長にとって、ゆべしがツボみたいで口角をひくつかせて耐えている。
「なんでも」
そのまま院長、歩いて行っちゃう。
「なにがおかしいのよ」
「あっ、行かないでください、待ってください。プリン作ったから食べてください、お口に合うかな」
行きかけた院長が振り向いた。
「ありがとう、いただく。あれから帰って作ったのか?」
正面に向き直った院長が話しかけてきた。
「はい、簡単に作れるので」
「たいしたもんだ」
目と目が合った院長が微笑んでくれたから、嬉しくて抑えきれない笑顔が溢れ出した。
「どれ」
私の手に乗る箱の中身を開けて覗いている。
「プリンも売り物みたいにきれいに作れるんだな、いただきます」
目尻を下げて、手に持つプリンを眺めて感心してくれた。
「どうぞ、院長に褒めていただけて嬉しいです」
つい夢中になって、香さんに勧めるのを忘れちゃった。
「香さんもどうぞ」
振り返ったら、香さんがママみたいに優しい瞳で見つめていた。
「ありがとう、いただくわね」
「院長、変わった食べ方ですね、かき混ぜてジュースにして飲むんですね」
初めて見る食べ方に驚いて、つい言葉に出してしまったら、香さんが吹き出した。
「失礼しました、実は明彦はね」
「あのマシュマロもおいしかった、このプリンも好きだ」
言いかける香さんに、院長は上から言葉をかぶせる。不思議な二人のやり取り。
「院長、飲み終わるの早いですね、まだありますよ」
「いや、いい、あとで、いただく。楽しみは、あと、ごちそうさま」
カタコトでロボットみたいな口調に、また香さんが吹き出す。それを見て、院長が眉をしかめて香さんを睨んだ。
今日も、こうしてにぎやかな一日が始まる。
「川瀬さんが言ったのとは違う意味で、私は本当に取り越し苦労ってわかったわ。今、これはって、確信したから心から安心できた」
「ん?」
「あなたを守る人がいるってこと」
「香さんと院長です」
香さんは、ただただ微笑むだけ。
「と、いうことだそうだ、終了」
「ちょっと待ちなさいよ、あなたね」
行きかける院長と追おうとする香さんが、私に背中を向けた。
「待ってください」
上体が反転した、二人の視線を目の中に受けた。
「香さん、私、院長のゆべしで」
「いいから」
院長に制止された。
「昨日も、ゆべしって。ゆべしがどうかしたの? タクシーに関係ある? どうして、明彦は止めるのよ」
院長にとって、ゆべしがツボみたいで口角をひくつかせて耐えている。
「なんでも」
そのまま院長、歩いて行っちゃう。
「なにがおかしいのよ」
「あっ、行かないでください、待ってください。プリン作ったから食べてください、お口に合うかな」
行きかけた院長が振り向いた。
「ありがとう、いただく。あれから帰って作ったのか?」
正面に向き直った院長が話しかけてきた。
「はい、簡単に作れるので」
「たいしたもんだ」
目と目が合った院長が微笑んでくれたから、嬉しくて抑えきれない笑顔が溢れ出した。
「どれ」
私の手に乗る箱の中身を開けて覗いている。
「プリンも売り物みたいにきれいに作れるんだな、いただきます」
目尻を下げて、手に持つプリンを眺めて感心してくれた。
「どうぞ、院長に褒めていただけて嬉しいです」
つい夢中になって、香さんに勧めるのを忘れちゃった。
「香さんもどうぞ」
振り返ったら、香さんがママみたいに優しい瞳で見つめていた。
「ありがとう、いただくわね」
「院長、変わった食べ方ですね、かき混ぜてジュースにして飲むんですね」
初めて見る食べ方に驚いて、つい言葉に出してしまったら、香さんが吹き出した。
「失礼しました、実は明彦はね」
「あのマシュマロもおいしかった、このプリンも好きだ」
言いかける香さんに、院長は上から言葉をかぶせる。不思議な二人のやり取り。
「院長、飲み終わるの早いですね、まだありますよ」
「いや、いい、あとで、いただく。楽しみは、あと、ごちそうさま」
カタコトでロボットみたいな口調に、また香さんが吹き出す。それを見て、院長が眉をしかめて香さんを睨んだ。
今日も、こうしてにぎやかな一日が始まる。
「川瀬さんが言ったのとは違う意味で、私は本当に取り越し苦労ってわかったわ。今、これはって、確信したから心から安心できた」
「ん?」
「あなたを守る人がいるってこと」
「香さんと院長です」
香さんは、ただただ微笑むだけ。