総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
たいていの人間は、
この低音ボイスで震え上がるのだと思う。
総長に尻拭いをさせてしまった。
それだけでも大問題、なのに。
返答を間違えればきっと、ただじゃ済まない。
だけどオレは怖くない。
むしろ。
――幻のくれるスリルが、心地良い。
「……ごめーんね?」
幻にこんな舐めた口の利き方をするやつ、オレの知る限りではいない。
「どうして来た。大人しくしてろって愁に言われたろ」
「幻に会いたかったんだよー!」腕に抱きつく。
「その割にはしけたツラしやがって」
「あ、バレちゃった?」
オレみたいな男、幻なら簡単に潰せる。
手足の自由奪って
ボコボコにして
……再起不能にさせられる。
やろうと思えばいくらでもやれる。
だけど幻は、
一度もオレに暴力をふるったことがない。
「説教しないの?」
「言って聞くならとっくに直ってるだろうからな」
「さすが、幻。ボクのことよくわかってる!」
というよりは。
……いい子になるのを期待していないのだろう。
幻はオレにお利口になれとは言わない。
飼われているようで野放しにされている。
愁が忠犬なら、オレは首輪のない飼い猫だ。
「そいつらさっさと始末しろ」
ああ、邪魔だもんね。
――ゴミはゴミ箱に。
幻、そういうとこ、徹底してるよね。
暗くてよく見えないけど、
アスファルトについた血痕もキレイさっぱり洗い流しておかないと機嫌損ねるだろうなー…。
「えー? 無理だよ。非力なボクが男四人なんて運べないし。抱えてベッドに寝かせてあげるのは女の子限定でお願いしたいなぁ」
「だったらそこの川にでも沈めてこればいい」