総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)


それ以上なにも言わない愁さんに、


「行くか」


立ち上がると声をかける幻さん。


「は?」

「どうした」

「いや、てっきり今夜は、このまましばらくユウといるのかと……」


走りに出ると言い出した幻さんを見て驚いている、愁さん。


「俺も行く。まだ今日パピコ食ってねえ」

「そこなのか?」

「……あいつらに話もあるしな」


幻さんの言葉に、愁さんが真面目な顔つきになる。


「夕烏は風呂入って寝ろ。明日から働くんだ。十分に身体休めておけよ」

「はい!」


ちょっと寂しいけれど、全然平気。

今まで一緒にいてもらえたから。

ご飯もみんなで食べられたし。


そうだ、買ってもらったものを整理整頓しよう。


洋服のタグは外して下着は洗濯して。


携帯電話の充電もして、使い方も勉強しておかなきゃ。


「おやすみ」

「おやすみなさい……!」


去りゆく幻さんと愁さんの背中を見つめ

このときばかりは


『わたしも男の子になれらなあ』


……なんて。


そんなことを考えずにはいられなった。


二人の関係が

男の子同士の友情が、とっても輝いてみえたから。

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