総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
この人たちといると、
優しくしてもらえることに慣れそうで怖い。
当たり前なんかじゃないのに
あまりにも自然に優しくしてくれるせいで
かつての自分がどんな環境にいたか、ということが遠い昔のように感じる日もそう遠くないのかもしれない――。
「い、言っておくが。余ってるからやったんだ。別にこんなことに恩とか感じなくていいからな?」
「いえ。すごく感じてます!」
「感じなくていいっつーの」
「愁さんみたいなお兄ちゃん欲しかったな」
「……はあ?」
「わたし、一人っ子なんです」
「そんな雰囲気はあるな」
「愁さんは?」
「俺は男兄弟がいる」
男兄弟と言われ、あの男たちの顔が浮かぶ。
……おばさんの息子たちだ。
「わたしも……家に二人の年の近い男の子がいて。まあ、ほとんど口を利くこともありませんでしたが」
「……?」
「いい思い出のひとつもなくて。だから今、愁さんが親切にしてくれるのが本当に嬉しいです。燐さんは素敵なお姉ちゃんみたいですし。幸せです」
「いや燐は見た目女子みたいだが見た目だけだからな。舐めてたら痛い目合うからな……?」
「ふふ。なんだかんだ、仲いいですよね」
「やめてくれ」
「みんな家族みたいで。あたたかいです」