イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「ポーレット……」

 何気なく声をかけてからアディは、ポーレットが年配の男性と話しをしてしたことに気づいた。木の影になって、男性の姿が見えなかったのだ。彼女が扇を使っていなかったため、他に人がいるとは思わなかった。

「あ、ごめんなさい」

 うっかり話の邪魔をしてしまったと、アディはあわてて謝って離れようとする。

「いいのよ、アデライード」

 にこりとポーレットは笑うが、反対にいた年配の男性はアディをぎろりとにらむと、挨拶もせずにぷいと離宮へと戻っていった。その姿を見送って、アディはポーレットに近づく。

< 141 / 302 >

この作品をシェア

pagetop