イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
王太子妃をわざわざ王宮の方から募らなければならないのが、その証拠だ。

 自分のような怪しい噂を持つ令嬢にまで声をかけられたのは、他に王太子妃の申し出を了承した家がなかったに違いないとアディは推測する。本来、王太子妃として王宮からの申し入れがあれば、最初にアディが思ったように、断るのは家の存続にかかわる。けれど、事情が事情なので、王宮としても強く出られなかったのだろう。

 もしかして断ってもよかったかな、とアディは少しだけ思うが、たとえ一時とはいえ王太子妃になったことがあるとなれば、後々の弟のためにも大きな影響力となれるだろう。

 まあいいか、とアディがのんきに考えている間に、馬車は大きな建物へと近づいていった。

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