溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜
しばらくの間「えーっと……」とまごついていると、多恵がハッとしたような顔になった。
今度はなんだろう、と不安を抱えながら小首を傾げかけた時、恐る恐るといった感じで綺麗な唇が開かれた。


「まさか二宮と……?」

「へっ?」

「今夜のデートの相手って、まさか二宮だったりする?」

「ま、まさか! っていうか、どうして二宮くんが?」


彼女から零された名前に、目を丸くしてしまう。

たしかに、二宮くんとは同期の異性の中では一番よく話すけれど、それは同じ部署にいるからというのが大きな理由で、きっとお互いにそれ以上のものはなにもない。
彼とプライベートで会うのは、同期で集まる時か、多恵と三人で……というのも、彼女はよく知っているはず。


もちろん、ここで多恵の口から穂積課長の名前が出ることなんてありえないだろうけれど、二宮くんの名前が出たことも腑に落ちない。
そんな私を見ている彼女は、小さなため息を落とした。


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