溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜
モノトーンカラーで纏められた寝室には、ベッド以外には本棚とクローゼットしかない。
インテリアを見終わるよりも早く、セミダブルサイズほどのベッドに下ろされてしまった。


緊張でいっぱいだった私の上に、穂積課長が覆いかぶさるように重なってくる。
グレーで統一されたベッドからは課長の香りがして、生々しい雰囲気に眩暈がした。


おもむろに近づいてきた顔に見入っていると、唇が触れ合った。
さっきの激しかったキスが嘘のような優しいくちづけは、少しの物足りなさを抱かせるけれど、幸福感を与えてくれた。


無言で交わす触れるだけのキスは、子どもの戯れみたいなのに……。甘い雰囲気とともに、艶めかしさが生じていく。


いつの間にか髪を撫でていた手が、慈しむように触れてくる。
幸せだと思えば思うほど、なんだか泣きたくなってしまった。


「好きだよ、莉緒」


甘くとろけるような、優しい優しい笑顔。
私だけが知っている穂積課長の素顔と、課長を独り占めしているという事実を、絶対に手放したくないと思った。


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