極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜
「覚えとけ。キスっていうのは、こうするんだよ」


吐息すらも奪われるような長いキスの間に、またもとの硬さを取り戻していた。


荒い息を整える私を見て、篠原が口元に満足げな笑みを浮かべる。
そのまま視線を上げた彼は、フッと瞳を緩めて笑った。


「今日はバレンタインか」


落とされた言葉で、いつの間にか日付が変わっていたことを教えられる。


「なぁ、これって俺のだよな?」


そして、クラッチバッグに入れていたはずの小さな箱を、目の前に差し出された。


中身は、“パヴェ・ド・ショコラ”。
もちろん、篠原に渡すつもりだった物だ。


恐らく、最初に抱かれた時に落としてしまったバッグから、箱が飛び出したんだろう。


「まぁ、俺以外の男に渡すなんて許さないけど」


リボンを解き、箱を開ける。
その一連の光景は付き合い始めた頃のものとよく似ていて、手作りのチョコを口に入れた彼に胸の奥が大きく高鳴った。


「お前にもやるよ」


程なくして、そんなことを言った篠原が、私の口にもチョコを押し込んだ。
喉が渇いている私には、舌に纏わりつくチョコがとても不快に思える。


直後、彼の舌が私の舌に乗っていたチョコを溶かすように絡み、口腔の甘さが倍増した。

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