極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜
第X章 溺愛ショコラ side K.S(おまけ)

Chocolat,XX 恋とは呼べない愛の話

お堅そうな女が来た、というのが、雛子の第一印象だった。


自分を守るためかのような地味なスーツからはどこか頭でっかちな雰囲気が漂い、面倒臭そうな性格なんだろうな、と頭の片隅で考えながら、緊張の面持ちで挨拶をする彼女の声を適当に聞き流していた。


だけど──。

「先生の作品が大好きなんです」

不意にそう言った雛子の唇からひとたび作品の感想が語られ始めると、それは止まることを知らないと言わんばかりにどんどん溢れ出し、作品への思いを必死に紡ぐ彼女の表情から目が離せなくなった。


作品の感想をもらったことなんて、数え切れないほどある。
それはとてもありがたいし、執筆への励みにもなるけれど、もらった言葉やファンレターはあくまでみんな同じように喜びを感じただけで、それ以外に思うことは特になかった。


それなのに、お堅そうだった顔にあどけなさが混じったような純粋な笑みが浮かべられ、頬を僅かに赤らめながら述べられていく言葉たちは今までとはなにかが違って、いつまでも聞いていたくなったほど。


だから、雛子の先輩にあたる当時の担当者に窘められたことで彼女の口から零されていた感想が止まった時、担当者に小さな苛立ちを感じていたような気がする。
もう随分と前のことだから、記憶は曖昧だけれど……。

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