あなたが居なくなった日。

私には実力なんて欠片もないけど。

こんな私がおこがましいかも知れないけど。

新田くんの音色を聴いた時の感動を彼に伝えたいと思った。

たった数分でどれだけ大きな刺激を受けたか伝えたいと思った。

ふと視線の先で一冊の譜面集が目にとまる。

それは引き出された譜面集の中で一番汚れているもの。

表紙の角は捲れているし、確か中も数カ所破れているところがあったはず。

私はそれを拾い上げ、ある事を決意した。
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