あなたが居なくなった日。
「寝坊?」
「いや、わざと」
楓の含みの意味が分からない私は首を傾げて先を促す。
「一日経てばだいぶ落ち着くかなって。さて、三咲さん?昨日のあれは南だったんですか?」
「ええー」
“昨日のあれ”。
それはもちろん帰りの傘の一件を指している。
確かに一日経てば落ち着きもした。
起こってしまったことは変えられないし、普段の生活で新田くんと私の接点は皆無。
そう考えると新田くんに昨日の私がどう思われていようとも痛くもかゆくもない。