旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~

 少しばかり思考が飛んでいたところを、宝来部長の耳触りのよい声が現実に引き戻した。

「改めまして。宝来成暁です。本日はご足労いただきありがとうございます」

 宝来部長はうやうやしく頭を下げた。

 この前話をした時も感じたけれど、この人は御曹司なのに少しもそれを鼻にかけていない。

 相手を敬うのは当たり前のことなのだけど、彼の背景を思えば、たったこれだけのことで好感を抱いてしまう。

 でも、だからこそわけが分からない。仕事のことといい、なにかとんでもない事情に巻き込まれている気がしてならない。

 状況を把握できないうちは余計なことは言わない方がいいと判断して、出された料理に舌鼓を打ち、皆の会話ににこやかな笑顔で調子を合わせる。

 叔父さんと宝来陶苑の社長は、専門学校時代の友人だそうだ。互いに家業があるので最近はめっきり会っていなかったが、今回息子のたっての願いで、旧友の叔父に連絡をよこしたそうだ。
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