旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~

 目を剥いて宝来部長を見やれば、彼は面映ゆさを隠すように慌てて微笑を浮かべた。

 なにその態度! 思わせ振りもいいとこじゃない!?

 どういうつもりかと問い詰めたいけれど、もちろんそんなことができる立場にない私は、なんとか作り笑いを張り付けてこの場をやり過ごすことしかできない。

 お見合いはまだ始まったばかりだ。そう焦らなくとも、彼の本心を聞き出す機会はあるはず。

 暴走気味だった心を落ち着かせて居住まいを正す。こちらの意図を汲み取ってくれたのか、宝来部長が皆に席に座るよう促してくれた。

 こういう気を配れるところがさすがだと思う。

 全員が着席すると、今日の一番の楽しみである料理が運ばれてきた。

 極力人と関わるのを避けるため外食はしないけれど、美味しいものを食べることが実は大好きだったりする。

 毎月お給料が入ったら人気グルメをお取り寄せして、叔父さんと叔母さんと感想を言い合いながら一緒に食べるのがひとつの流れになっている。
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