彼と彼女の花いちもんめ~溺愛王子の包囲網~
初めての・・・
唇、瞼、頬、鼻。
 啄むようにキスをされて、みちるが漸く目を開ける。
 目の前には、さっきまでの激しさを全く感じさせない、穏やかな篤樹の笑顔。
「・・・篤樹・・?」
 掠れた声で問いかければ、唇にキスされた。
「体は、平気?」
 辿る様に肩から腕のラインをなぞられて、みちるが小さく頷く。
 体の奥にある違和感以外は、なんともない。
 このどうしようもない恥ずかしさを除いて。
「俺、優しくできた?」
「・・・だ、大丈夫・・」
「喉乾いたろ?こっち向いて」
「ん・・・」
 頷いたみちるの唇を僅かに開いて、口移しでミネラルウォーターを注ぎ込む。
「みちる、いっぱい気持ち良くなった?」
「・・・っ」
 甘い問いかけに、先ほどまでの行為が鮮明に蘇ってきて、みちるは顔を真っ赤にして黙り込んだ。
 その顔を見て、肯定と受け止めた篤樹、乱れた髪を梳きながら、優しく囁く。
「可愛かったよ」
「も・・・もう・・・やだ」
「今回は俺も、余裕無かったけど、次は、もっとじっくり確かめるから」
「確かめるって何よ・・」
「みちるのイイトコ」
「っいらないっ・・・」
「なんで、ちゃんと分かってないと困るから」
「・・・」
 思い切り眉根を寄せて、頬を染めるみちるを、いとおしそうに見つめて、篤樹が答える。
「みちるを気持ちよくしてやれるのは、俺だけだろ?」
「っ!」
「だから、もっと知りたいんだ」
 篤樹の宣言はどうしようもない程に甘くて、みちるの胸の奥をはちみつのように焦がす。
 抱き合う前より、今の方が、二人の距離がずっと近い。
 一番無防備な姿を見せたせいか、妙な意地はもう張れないような気がした。
「あ・・・たしにも、教えてくれる?」
「うん?」
「篤樹が、気持ちいいとこ・・」
 みちるの問いかけに、篤樹が思わず黙り込む。
 それから、盛大に溜息を吐いた。




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