君と計る距離のその先は…

「キ………。
 いえ、なんというか、その。」

 前みたいなことと言ってもピンときていないような橘さんに、本当に私の勘違いだったのかと思えてくる。

 じゃ、あれはなんだったの?
 人工呼吸だとでもいうの?

 いやいや。そんなわけない。
 だいたい何?今のこの状況!!

 動揺を隠しきれない私は肩をつかまれて半回転させられた。
 壁を背に、橘さんから見つめられる形になってしまった。

 真っ直ぐ過ぎる視線に見ていられなくて俯くと、そっと頬を撫でられ、流れていた髪を耳にかけられた。

 くすぐったいのに、胸がキュッーっと締め付けられて仕方がない。

 橘さんに頬を撫でられた!?
 ホント昨日から橘さん、どうしちゃったの?

 硬派で堅物で、もしかしたら女の人に興味がないのかもよって噂まであった橘さん。
 何よりも強面な橘さんが私は苦手だ。

 その橘さんがなんの関係もなかったはずの私へ慈しむような甘い眼差しを向けている。
 大きな手は髪を梳かして後頭部に添えられた。
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