君と計る距離のその先は…

 再び近づいてくる橘さんに体を固くする。

「嫌ッ。なんで…。
 付き合ってるわけでもないのに。」

 それともこれってセクハラってこと?

 動きが止まった橘さんに少しホッとしていると安心なんて出来ない言葉が返ってきた。

「付き合ってるだろ?俺達。」

「はい?」

 顔を上げると端正な顔立ちの瞳と目が合った。

 ないないないない。
 この人が妄想癖があるとか。
 間違ってもない。

 冷静沈着、それでいて傍若無人。
 仕事が出来るからこそ尊大な態度が許される私とは住む世界が違う人。

「キスしたろ。」

「橘さんが勝手にしただけです!」

「キス出来ただろ?」

「だから勝手に!…ッ。」

 両肩をつかまれて言葉を失うと橘さんはゆっくりと近づいてくる。

「嫌なら突き飛ばすなり、蹴り上げるなりすればいい。」

 そんな………出来るわけ…。

 でも、、、怖い!!

 脚が正体を無くしてしゃがみこんだ。
 目には涙が溜まる。

「悪い。無理強いした。」

 未だ恐怖心は感じるものの、素直な反省の言葉に呆気に取られた。
 こんなことで悪い人ではないのかも。と思う私は甘いのかもしれないけど。

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