風の見える所
とうとう窓際まで来て、桃は右手のベッドを覗き込んだ。
(いたぁっ!)
彼は初めて見た日と同じ目をして、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
腕には点滴の管が付いている。
桃が何も言わずにベッドの脇に行くと、彼は桃にも聞こえる程大きく、ハッと息を飲んだ。
桃は頭の中がゴチャゴチャになっていたが、その息が聞けただけでここに来て良かったと思えた。
しばらく二人で何も言わずにいた。
桃は下を向いたまま体の震えを抑えるのがやっとだった。
かなりの時間が経ち、すっと彼が息を吸う音がした。
「来てくれるなんて思わなかった。どうして?」
「下の二階に入院してる人の奥さんとちょっと知り合いで…お見舞い行ってみればって言われて」
「下って…外科だね」
桃は話しながら彼に自分が見られているだけで、溶けそうな気持ちだった。
(戸川さんの目の百万倍綺麗!)
少し話をして落ち着いてきた桃は尋ねた。
「何で入院してるの?」
彼は少し迷う様にしてから言った。
「俺小さい頃からひどい喘息なんだ。何度も発作起こして救急車で運ばれて、病院と家の往復だった。だから正直十歳位までの記憶は、はっきりしてないんだよね。最近は結構良くなってると思ってたんだけど…」
彼は起き上がったまま下を向いた。
(いたぁっ!)
彼は初めて見た日と同じ目をして、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
腕には点滴の管が付いている。
桃が何も言わずにベッドの脇に行くと、彼は桃にも聞こえる程大きく、ハッと息を飲んだ。
桃は頭の中がゴチャゴチャになっていたが、その息が聞けただけでここに来て良かったと思えた。
しばらく二人で何も言わずにいた。
桃は下を向いたまま体の震えを抑えるのがやっとだった。
かなりの時間が経ち、すっと彼が息を吸う音がした。
「来てくれるなんて思わなかった。どうして?」
「下の二階に入院してる人の奥さんとちょっと知り合いで…お見舞い行ってみればって言われて」
「下って…外科だね」
桃は話しながら彼に自分が見られているだけで、溶けそうな気持ちだった。
(戸川さんの目の百万倍綺麗!)
少し話をして落ち着いてきた桃は尋ねた。
「何で入院してるの?」
彼は少し迷う様にしてから言った。
「俺小さい頃からひどい喘息なんだ。何度も発作起こして救急車で運ばれて、病院と家の往復だった。だから正直十歳位までの記憶は、はっきりしてないんだよね。最近は結構良くなってると思ってたんだけど…」
彼は起き上がったまま下を向いた。