風の見える所
おじさんは裏返った変な声で、
「平日も逢いたくて来ちゃったー」
と、言った。

病室のあちこちでクスッと笑い声がした。

桃がタツミのベッドの前に来ると、
「どっ、どうしたの?」

タツミは不思議そうに尋ねた。

桃は理由を言おうとしても言葉が出ずに、涙が溢れてきた。

「あーたっちゃん彼女泣かしてるぞー。女泣かして一人前ってか?」

よく分からない講釈をたれ始めたおじさんに、いつもは笑って聞き流しているタツミは嫌な顔を向けてから、仕切りのカーテンをシャーッと閉めた。

カーテンの中でもう一度タツミは尋ねた。

「どうしたの」

今度は少し怯えている。

タツミが涙の理由を誤解しそうになっていると思い、恐る恐る話し始めた。

「私をタツミに逢わせてくれたおばちゃんが亡くなったの。旦那さんも」

「それって下に入院してたって人?」

「うん」

あまりの事にタツミも目を丸くしていたが、深くは聞いてこなかった。

「ウワァッ!」

桃は大きな声を上げて泣いた。

タツミは大声で泣きじゃくる桃にオロオロしている様子だったが、意を決した様にベッド端に座った桃の頭を自分の胸に引き寄せた。

桃は温かい胸が幻じゃない事が嬉しくて、また涙が出た。

しばらくして泣き止むと、タツミの顔を桃は見上げた。


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