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甘い誘惑

完璧主義

「あなたは常に完璧でいなさい。」
「実力のある者しか生き残れないんだぞ。」
どうして?
なんで完璧でいる必要があるの?
『本の主人公の様に完璧に』
それが我が家のルール。それに従うために、ずっと本当の自分を隠して、自分を犠牲にする事を余儀なくされた。幼い頃から常に、本に出てくる「完璧な人」になることを求められてきた。だから私は本が大嫌い。徹底的な完璧主義のおかげで私は勉強も運動も得意。もちろんそれ以外も。部屋にはたくさんの本が置いてあるけれど、ほぼ読んでいない。

きっと…
きっと狂ってるんだ……
父さんも母さんも…
私の事、自分たちの名声を得るための道具だと思ってるんだ。

そんな身勝手な親に反抗すら出来ない。
いや…出来ないんじゃない……しないんだ……
怒られるのが怖いから。
嫌われるのが怖いから。

ずっと、自分を偽って生きてきた。

私は、人の言いなりになって生きていくしかできないのだろうか?今までもこれからも、誰かの都合のいい人形みたいに生きていくのだろうか?
私には自分の人生なんて無いんだろうか。

これから私はいつものように食卓に着き、面白くもなんともないお金の話や完璧な理念を延々と聞かされて、自主(強制)勉強をして、お風呂に入り、また勉強して寝て、また次の日が始まる。いつもいつも、私の生活はワンパターン。両親に言わせれば、無駄のない完璧な生活、とでも言うのだろうが、今は私だって、スクールライフを満喫したい17歳……とは絶対に両親の前では言えない。

この白金家の主である私の父親は、かなり成功している資産家。母親も、元々は名家の娘だったようだ。
そして私は白金莉央。そんな超金持ち家系の一人娘。
青春真っ盛りのはずの17歳だが、この1家に生まれたせいで、髪を染めてみる事も、メイクを研究する事も許されない。ただし、自分で言うのもなんだが、私はオールラウンダー。自分では全くそうとは思えないが、雪のように白い肌と、純黒の黒髪に整った目鼻立ち。親にも見た目だけは認められていて、街を歩いていると、20分に一回はナンパされ、すれ違う人々も私の事を2度見するのだ。あまりにも見られていたので、私の顔はおかしいんじゃないかと本気で悩んだ。
「綺麗」だとか「可愛い」だとか、ふざけるのも大概にして欲しい。私は自分の顔が好きじゃないのに。中年の男に変な目で見られる17歳の気持ちを考えても見て欲しい。挙句の果てに付いたあだ名が「黒雪姫」。
本当に私はどこまでついてないんだろう……

そんな事を思いながら、やる事を済ませてベッドに身を投げ出した。
溜まっていた疲れが溶けだしていっているような感覚があり、私の意識は、あっという間に睡魔に乗っ取られてしまう。
おやすみなさい、また明日。
誰にしたのか分からない夜の挨拶をしてから、私は眠りに落ちていった。
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