一期一会
けれど何度か中原君に訊こうとしたが意気地無しの私は訊けずにいた。


気が付くと担任が「さようなら」と言っていて、最後のホームルームも終わってしまった。


「西野」

「!」


これが今日訊ける最後のチャンスと意気込んで席を立とうとしたところで、訊こうと思っていた中原君から声を掛けられた。


「話したいことが、あるんだけど……」


中原君は目を伏せて、何故か少し勿体振るようなゆっくりな口調。


「……うん、何かな……?」

「…………………………」


だが中原君は何か言いたそうにしているが何も言わない。

その沈黙が私に不安を煽ってくる。

沈黙に耐え切れなくなった私は自分の口を動かした。


「じゃあ私から訊いても良い?」


私の言葉に中原君は顔をゆっくり私に向けた。


「中原君って合コン、興味ある?」


あれからずっと訊こうとしていたこと。


「いや」

彼は首を僅かに振って答えた。


興味が、無い……。


嘘だと言って欲しい。


一縷の望みを込めて私は言葉を出した。


「中原君は今日、興味の無い合コンに行くの?」
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