一期一会
考えただけで胸の奥がどんどん苦しくなっていく。


私をこれ以上追い込まないでよ……。


目頭が熱くなるのを感じて、グッと奥歯を噛んで堪えた。


あぁ……やっぱり私には無理だ……。


中原君の口から他の女の子の名前なんて冷静に聞けない。


中原君が女の子と仲良くしているところなんて冷静に見られない。


自分の気持ちを押し隠したまま、中原君の傍には絶対に居られない。


私は涙を堪えつつ、力を振り絞って口を動かした。

彼の方は見れない。


「付き合えば良いんじゃない?それにそんな事、私には関係のないことだよね」


自分でも驚く位、冷めた声が出た。

でもそれで良かったかもしれない。


「じゃあ帰るから。もう話し掛けないで」


だってこんな状態で冷静に彼の傍になんて居られないもん……。


そして私は最後まで中原君の方を見ることなく、逃げるように彼に背を向けて歩き出した。
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