一期一会
確かに彼女の自業自得だ。




じゃあ、小野田さんは……?




「小野田さんも放っとけば良いと思う?」

私は小野田さんに問いかけた。


「うん。西野さんも被害に遭ったんだからそう思うでしょ?私達、被害者だよ」

当然のように彼女は強い口調で言った。


……被害者、ですか。




楠木さんはまだ泣いている。


私も中原君が助けてくれなかったら、ああなっていたかもしれない。


今、彼女を助けようとする人は此処には一人も居ないだろう。



私は勢いよく立ち上がった。



「瑞季?」

戻ってきたばかりなのに立ち上がった私を不思議に思って呼んだだろう成実ちゃんに一度微笑んでから、私は迷うことなく歩き出す。


周りには誰も居ない彼女の席を目指して。
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