一期一会
「あ。瑞季の旦那様、真面目に朝練してるー」

成実ちゃんが横の窓を見ながら言った。
この教室は一階にあり、しかもサッカー部の練習場所から近いので、窓の外に目を向けると中原君たちサッカー部の朝練風景が見えるのだ。


「……だから旦那じゃありません」

唇を少し尖らせながら呟く。

「はいはい。それよりも、瑞季はいつもこんな早い時間に来てるのかしら~?うふふふふ~」

成実ちゃんはそう言って気持ち悪い程、不気味な薄笑いを浮かべている。

「今日はたまたまなの。バイト探ししたかったから、たまたまです」

私はポーカーフェイスで答える。

「ふ~ん。たまたまね~」

彼女の表情は変わらず、先程よりも口角を上げてニヤついている。
< 63 / 302 >

この作品をシェア

pagetop