100日間、あふれるほどの「好き」を教えてくれたきみへ




海月が病気と戦っていたことを知る人は少ない。


二年生になり海月が学校にいなくても気づかない生徒たちはたくさんいるし、中には『冬休み中に転校したらしい』とありもしない噂を流してる人もいる。


でも、それでいいのだと思う。


『大切な人たちの心にいられれば十分』

海月なら、そう言うと思うから。




「兄ちゃん」

学校終わりの帰り道。俺がとぼとぼと歩いていると真新しい制服を着た弟が後ろにいた。


相変わらずゲームばっかりやってるけど、男として危機感を覚えるぐらい最近の三鶴は成長が凄まじい。身長も一気に三センチぐらい伸びてるし、制服だってこうして様になっている。



「つか、今さらだけど、なんでお前うちの高校にしたわけ?」



実は三鶴は新一年生として俺と同じ高校に入学した。


受験勉強なんてまともにしてる素振りはなかったけれど、焦ってやらなくても偏差値の高い学校をいくらでも選べるぐらいの頭脳は持っていた。

なのに、三鶴は知らない間にうちの高校を第一希望にしていて、推薦入試であっさりと合格した。



「うーん。兄ちゃんと岸さんが一緒に過ごした学校を見てみたかったからかな」


三鶴はあまり感情的になることはないけど、海月の死を俺と同じように悲しんでくれていた。


考えてみれば俺と海月が接点を持つ前からふたりは知り合いだったし、三鶴にとっても海月は大切な人だったのだろうと思う。



< 259 / 264 >

この作品をシェア

pagetop