100日間、あふれるほどの「好き」を教えてくれたきみへ



「ふーん」

美波は勘繰るような声だったけど、深く尋ねてこなかった。


「あんたさ、前に自分は春までにはいなくなるって言ってたじゃん。あれなに?面倒見てくれる男でも捕まえたの?」


美波の言葉に動じる素振りは見せずに、私はジャージを絞って栓を抜いた。ゴポ、ゴポゴポ……と排水溝に吸い込まれていく水を、私は一点に見る。


死ぬから、なんて言えないし、言うつもりもない。


鎮痛剤の効果しかない病院の薬代は、バイトを辞めたあとでもなんとかあるし、自分の数少ない荷物は時期が来たら捨てるなり売るなりして整理するつもり。

それからは学校に退学届けを出して、電車に乗ってどこか遠くの町に行って誰にも知られずにこの世界からいなくなる予定。


誰かに話せば、なんて無謀で計画性がないんだと笑われるぐらい幼稚だということは分かってる。

曖昧でうまくいく保証もない予定を私は毎日爆弾を抱えた頭で繰り返し考えては、いつの間にか明るくなっていく外をぼんやりと眺める。


それが私の夜の過ごし方であり、私の朝の迎え方。

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