Adagio
■7
まだまだジャケットの要らない暑い日もあるが、ずいぶんと日が落ちるのが早くなった。季節が進んでいくのをいちばん実感するのは、人事部の窓を通してそれを感じるときだ。
「綿貫」
就業時刻を一時間半過ぎ、いつになっても答えを言いに来ない有紗に痺れを切らしたのか、宇美が部長席から手招きした。有紗は席を立ち、宇美の元へ向かう。
「間違ったって何だっていいから、綿貫なりの考えを言ってごらんよ。ほらほら、こっちも帰れないだろ」
両手を前で組んだまま硬直している有紗の腕をつつきながら、宇美は笑う。
「はい、そこに椅子持ってきて。そういえば、現在トレーニング中の首藤さんは合格でした。気張らなくても、答えはひとつじゃないからね」
帰宅後の社員のデスクから椅子を引っ張ってきて、有紗は宇美の横に並んだ。
「はい、どうぞ」
緊張させないための配慮なのか、宇美の視線は依然デスクの上に散らばった書類にある。
まだまだジャケットの要らない暑い日もあるが、ずいぶんと日が落ちるのが早くなった。季節が進んでいくのをいちばん実感するのは、人事部の窓を通してそれを感じるときだ。
「綿貫」
就業時刻を一時間半過ぎ、いつになっても答えを言いに来ない有紗に痺れを切らしたのか、宇美が部長席から手招きした。有紗は席を立ち、宇美の元へ向かう。
「間違ったって何だっていいから、綿貫なりの考えを言ってごらんよ。ほらほら、こっちも帰れないだろ」
両手を前で組んだまま硬直している有紗の腕をつつきながら、宇美は笑う。
「はい、そこに椅子持ってきて。そういえば、現在トレーニング中の首藤さんは合格でした。気張らなくても、答えはひとつじゃないからね」
帰宅後の社員のデスクから椅子を引っ張ってきて、有紗は宇美の横に並んだ。
「はい、どうぞ」
緊張させないための配慮なのか、宇美の視線は依然デスクの上に散らばった書類にある。