Adagio
「神長さん、成長を楽しめる人っていう条件には当てはまると思います。多分、想像ですけど。でも……。

宇美さんの言う楽しさが、ちょっとずつ自分の思うような仕事が出来るようになっていく楽しさだとしたら、私たちは神長さんの期待に応えられるでしょうか?」

 おそらく難しいだろう。そういったニュアンスをこめて有紗が尋ねると、「そう」宇美はぱちんと指を鳴らした。表情は明るい。

「私はそれを、この会社での伸びしろの部分で考えてる。才能を頭打ちしない仕事を回せるかどうか。アイデアを形にするためにいくつも会議があって、論破できたとしても最終的に形にするまで時間もかかる。

この会社で十年かけて学ぼうとする人と彼のペースはあまりにも違う。正直、現状だと彼に応えるのは難しいかもしれない。

役職の話じゃないよ、かけた時間に対して充実感を与えられるかっていうところね。結局それができなければ、採用してもお互いに辛いでしょう」
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