Adagio
『残業や休日出勤は多い?』
『課によってはすごく多い』
『それでも平均勤続年数がこれだけ長いのはどうしてだと思う?』

 再びInnocenceの言葉がめぐり、有紗ははっとする。答えは簡単だ。ここで過ごす日々が、それぞれにとって充実していると感じられるからだ。

頭の中で考えていたことを身近な人たちに置き換えると、少しずつ繋がってゆく。

「会社が人を採用するっていうと、一方通行でシステマティックなイメージがあると思うけど、そうじゃないのよね。

人は、人と接することで互いに学んでいくものだから、ちゃんと手を取り合っていかなきゃいけない。こっちの都合だけで採用するんじゃなくて、相手の先の人生を考えてあげることが大事。これが二つ目。

生活の大半の時間を過ごす場所が会社でしょ? それなのにさ、楽しさを感じられなかったら人生がもったいないと思うのよ。さて、話を神長くんに戻そうか」

 バトンタッチだ、というように宇美が有紗の肩を叩いた。
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