Adagio
「そりゃあ気付いてるでしょ。でも、これがいちばんいいんだって、新井くんも私も分かってるから。

こういう少し特別な気持ちが、この会社でいい仕事をしようって思うモチベーションにもなってる。それだけでも十分感謝してるんだ。そういう恋もあっていいんじゃないかなと」

「……そうかもしれませんね」

 宇美の中で燻り続け、完結することもない恋。そのはずが、悲壮感もなければ、ただ自分を納得させようとして言っているだけにも聞こえなかった。

恋人たちの愛情が年月とともに形を変えていくように、片想いの気持ちも、変わっていくのだろうか。それとも、気持ちは変わらずとも、上手く割り切れるようになるのだろうか。

「諦めないと、って、想いを閉じ込めて苦しくならなくても、このまま坂巻くんに恋しててもいいんじゃない?

人を好きになるのは自然な感情なんだから、好きじゃないって思い込んだってどうせ無理なのよ。だったら自分の気持ちを素直に認めたほうがいい」
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