Adagio
有紗はじっと宇美の横顔を見つめた。頼まれてもいないのに、胸の内にあるものを勝手に汲もうとしてしまう。

「それにさ。そうしているうちにも、人は自然に新しい恋をするもんだ。綿貫にももっと合う相手が見つかるかもしれないしね。神長くんとかどう? 二年くらい彼女いないってよ」

「か、神長さん?!」

「結構似合ってるよ。彼さ、クールな雰囲気だけど、笑うとすごくかわいいんだよね。あれはちょっとやられるね」

「あっ、それはわたしも思います! ギャップ萌えです。それに、性格も優しいしほんとうに素敵な人だなあって」

「ほら、ちょうどいいじゃない。これからしばらく開発でうちの会社来るしがんばれよ」
 宇美が有紗の背中をばん、と叩いた。反動で足が一歩前に出る。

「絶対無理ですよー。宇美さんこそどうですか?」

 軽い笑いでそれを流し、宇美は肩をすくめた。もう少し話をしていたかったが、地下鉄への連絡階段はすぐそこだ。
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