Adagio
「あ……、じゃあ発信元はわたしだったのかもしれません。実は少し前、坂巻さんにそのカフェの話したんです。坂巻さん好きかなあって思って。すみません、佐倉さんと同じお店気にしてたのかと思ったら興奮しちゃって」

 何か勘繰られてしまうかと思ったが、華美はそんな様子も見せずに微笑んだ。

「そっかあ、綿貫さんのおすすめって分かったら、ちょっと納得」
「そうですか?」

「なんかね、ずいぶんかわいい造りのお店だなって思ってて。お客さん女の子多そうだし、いつも坂巻さんが行くカフェとも雰囲気違うし、不思議だったんだよね」

「たしかに、男の人ほとんどいないかもしれません。これじゃあすすめられても困っちゃいますよね。どうしよう、そういうことまで気が回りませんでした!」
 有紗は肩を落とす。

「でもね、坂巻さんすごく行きたそうだったよ。一人じゃちょっと行けないとも言ってたけど」

 華美の言葉に何かの確証があるわけではない。だが、坂巻があの店を気に入ってくれたのが事実なら、それだけで救われたような気にもなる。ほんとうに、宇美の言ったとおりだったのかもしれない。
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