Adagio
先日有紗からまったく同じ誘いがあったが、もしかしたら、華美も誘う予定だったのかもしれない。

断ってしまったことを申し訳なく思っていただけに、他に行く相手がいたことに少しほっとした。今週末は両日、アジャイルという手法のシステム開発セミナーに申し込みをしている。

 神長や優月の求めるやり方にいちばん近いものだ。もちろん二人はいくらでも教えてくれるのだが、それを百パーセント飲み込むためには自分でベースを用意しておかなくてはならない。だから、この予定はどうしても外せなかった。

 坂巻は、有紗の時と同様に断りのメッセージを送った。それからふと思い立って華美に神長を誘いたい旨を伝える。返事は文脈からしてオーケーだ。

「神長くん今度さ、青山の紅茶専門店行かない? 佐倉さんと綿貫さんも一緒に」
「はあ」

「実は二人から誘われたんだけど、女の子が多そうな店だからさ。店の中で男の客僕一人だったらちょっと恥ずかしいなと」
< 128 / 131 >

この作品をシェア

pagetop