Adagio
「まだです、やっぱりちょっと本人と直接会ってみないと」笑顔で誤魔化すと、

「ほう。人を見れば分かる目なら持ってるってことね。じゃあ、今週中には答えが出るな。部内ミーティングの最後で、例の彼が新人事システムのヒアリングしにきてくれることになってるから、そのあと答えあわせね。

綿貫がどれだけうちの会社のことを分かってるかよーく確認させてもらって、ボーナス査定考えるわ」

「えーっ」
 注目を一瞬で集める金切り声に、宇美は腹を抱えてけらけら笑った。

「冗談だって。じゃあ首藤さんのことよろしくねー」

 終始宇美のペースに振り回されたままである。それにしても考えなくてはならないことが多すぎる。

 自分自身が仕事をする上で気をつけていることを自分なりに教える。そうは言われても、それが何なのかぱっと頭に浮かばないから、気持ちが焦った。

有紗はとりあえず自席に戻り、新入社員の頃から習った逐一をまとめてある虎の巻を開いた。
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